2021年12月1日発売 土井中照著『スイーツ系漱石』
価格:800円(税込)

『文士の生活』で「菓子は食う。これとても有れば食うというくらいで、わざわざ買って食いたいというほどではない」といっていますが、漱石は甘いものが大好きでした。
 青年時代には甘いもの中毒といってもいいほど、お菓子を食べまくっています。汁粉を食べ過ぎたために盲腸炎にかかって、予備門を落第したこともありました。しかし、それでも甘いものはやめられません。酒がほとんど飲めなかった漱石は、ストレス発散のために、スイーツを食べ続けたのです。
 結婚生活が始まっても、妻の鏡子は料理下手のため、漱石が美味しいというと、その料理が毎日続きます。作家時代のことになりますが、砂糖のたっぷり入った「すき焼き」が何週間も続くことがありました。
 ロンドン留学を、漱石は嫌な体験のひとつに挙げていますが、ロンドンの食生活は甘いものに囲まれていました。当時のイギリスの砂糖消費量はとても多く、先進国の中でも群を抜いていたのです。紅茶にはたっぷりの砂糖、食事の後にはプディングが出て、ジャムやママレードをかけて食べます。
 帰国してからも、ロンドンで覚えたパンに砂糖をかける生活を続けましたが、胃が悲鳴をあげて、甘いものが制限されてしまいます。
 お菓子が食べられなくなった漱石は、その記憶を作品に活かし、甘いものに対する魅惑と渇望を作品に綴りました。そのためか、作品には和菓子や洋菓子が頻繁に登場し、甘さへの憧憬に溢れています。
 そんな甘い物好き、スイーツ系男子・漱石の「甘い生活」「スイーツな人生」を、作品に登場する甘いものやエピソードを通じて紹介したいと考え、『スイーツ系漱石』という本にまとめました。

土井中 照(どいなか・あきら)
出身地の四国・愛媛に関する歴史、民俗に詳しく、数多くの著作を上梓。近年は、夏目漱石や正岡子規らの文芸研究に軸足を置き、元デザイナーのスキルを活かして漫画やイラストを多用した研究書も人気。その豊富な知識から「愛媛の雑学王」と呼ばれ、キー局、準キー局を含むテレビ・ラジオ番組にも多数出演。

《得意分野》
□明治文芸(夏目漱石、正岡子規)研究
□民俗系・歴史系研究
□食文化研究

はじめに

第一章 漱石と和菓子
 羊羹1:漱石の煉羊羹フェチ
 羊羹2:『草枕』の蒸羊羹のような硯
 羊羹3:羊羹を食べるなら藤むら
 羊羹4:運命を象徴する金玉糖
 饅頭1:漱石は饅頭嫌い?
 饅頭2:ハエのたかった揚饅頭
 饅頭3:大きな田舎饅頭
 饅頭4:持ち帰りを疑った栗饅頭
 饅頭5:葬儀と蕎麦饅頭
 団子1:団子と反権力
 団子2:多々良三平が薦める団子
 餅菓子1:安倍川餅で妻を貶す
 餅菓子2:粟餅のようにできる作品
 餅菓子3:季節によって名前が変わる
 餅菓子4:歯についた空也餅
 汁粉:漱石の通った汁粉屋
 ぜんざい:関東と関西の名前
 今川焼:値段とお金の価値
 焼芋1:書生の羊羹
 焼芋2:焼芋を食う人への追悼
 悪食勝負:あんこ入り豚汁VS饅頭茶漬
 煎餅:塩煎餅と蕪の漬物は雁の味?
 切山椒:風景から連想した菓子
 干菓子:病床のコスモス
 甘酒:季語は夏

第二章 洋菓子と漱石
 アイスクリーム1:『虞美人草』での博覧会のアイス
 アイスクリーム2:入院した漱石の好物
 アイスクリーム3:夏目家の手づくり
 アイスクリーム4:焼芋屋の夏は氷水屋
 氷水:坊っちゃんと山嵐の1銭5厘
 ビスケット1:ロンドン時代の侘しい記憶
 ビスケット2:試験採点中のつまみ食いを報告
 ビスケット3:『虞美人草』に登場する和製仕様
 ビスケット4:大患後の感動
 ウエハース:自己主張に乏しい存在
 プディング:イギリス流のお菓子
 ゼリー:お菓子とオフィーリア
 チョコレート1:飲み物として
 チョコレート2:食べものとして
 カステラ1:つまみ食いに最適
 カステラ2:チョコレートがけの亡国の菓子
 シュークリーム:記者の失敗

第三章 全国の菓子と漱石
 松山:坊っちゃん団子の秘密
 岡山:内田百間が贈った吉備団子
 高田:医師からの越後名物笹飴
 新潟:越後の笹飴と妻の鏡子
 夏見の里:名物の心太
 宇和島・東京:唐饅頭の所変われば
 高田・京都・東京:粽の判断基準
 金沢:晩年のツグミと「長生殿」
 京都:京都の風情を味わう八つ橋
 ロンドン:正岡子規の焼芋の質問
 神戸:禅僧からの瓦煎餅
 神戸:禅僧たちのお礼の饅頭

第四章 シュガー・ブルース
 漱石と砂糖1:汁粉の食べ過ぎ
 漱石と砂糖2:妻・鏡子の手料理
 漱石と砂糖3:イギリスでの食生活
 漱石と砂糖4:朝食は砂糖かけパン
 漱石と砂糖5:月にジャム缶8個
 漱石と砂糖6:砂糖漬の甘い誘惑
 漱石と砂糖7:青いウンコと間食
 漱石と砂糖8:糖尿病放置のつけ
 漱石と砂糖9:解剖所見と糖尿病